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俳優残酷物語③ー俳優業は人生を左右する素晴らしい仕事 [映画業界物語]

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俳優は出演依頼があればまず、シナリオを読み、自分の役を把握する。どんなキャラで演じようか? どんなふうに台詞を言おうか? あれこれ考える。そして台詞を覚える。どんなに長い台詞でも、覚えなければならない。ベテラン俳優になると、撮影現場にはシナリオを持って来ない人がいる。それでは現場で「あそこ何だっけ?」とシナリオ台詞を確認できない。

だが、それは「完全に覚えている!」という自負であり。自分を追い込んでいる人たちなのだ。黒澤組の俳優は皆そうだったと聞く。驚いたのは僕のデビュー作「ストロベリーフィールズ」の主人公4人も現場にシナリオを持って来ていなかった。恐るべし天才4人少女!と思ったものだ。

事実、彼女らは10年経った今も第1線で活躍している。本物は若い頃から違うことを痛感する。台詞を覚え、演技プランを考えるだけではなく、体調管理も大事。撮影の日に「風邪を引きました」なんて言えない。そのために多くの人に迷惑をかけるし、撮影できないと、何百万という製作費が無駄になる。

メンタルコントロールも大事。撮影直前に恋人と別れて、塞ぎ込んでいても撮影では全力を出さなければならない。会社員なら上司に「落ち込んでないで仕事しろ!」と叱られただけで済むかもしれないが、撮影ではそうはいかない。

親が危篤でも撮影があれば会いに行けないのが俳優。「その日は欠席させてください」なんて絶対に言えない。そのためにどれだけの人が迷惑するか? 大変なことになってしまうからだ。これが舞台なら、その日の何百人という観客はどうすればいいのか? 個人の事情で休んだり、落ち込んだりできないが俳優業である。

俳優というと奇麗で可愛い存在と思いがちだが、実は人生を賭け、魂を削り芝居をする仕事なのだ。いや、自分の人生だけでなく、人の人生も左右する仕事だ。例えば、親が病気で心配しながら地方ロケに参加した。だから、集中できない。いい芝居ができない。結果、耐えられない芝居と判断されカットとなる。

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本人は自業自得である。が、その場面で共演した他の俳優のシーンもカットされる。俳優ならまだいい。その種のことは覚悟している。が、エキストラの人はどうか? 僕の映画なら市民俳優の人たちも、その俳優のせいで一緒にカットされてしまう。もしかしたら、人生で一度限りの映画出演かもしれず。たぶん、そうであることが多い。よほどでないと映画に二度三度出演する一般の方は少ない。

なのに、その俳優のために、人生で1回きりの映画出演を奪うことになる。友達や家族に「俺、映画に出たんだよ。俳優の**さんのそばにいたから絶対に映っている!」楽しみに映画館に家族と行くと、その場面がカットなっていた。ということもある。

その俳優が親が病気で心配と、力を出せなかったせいで、その人が人生で一度きりの映画出演を台無しにしてしまったのだ。自分の人生だけではない、人の人生まで壊してしまう。おまけに、その人は「自分が素人で下手だからカットされたのかも?」と悩むかもしれない。でも、原因はプロの俳優であることは分からない。

そんなふうに俳優の責任というのは、もの凄く重い。恋人に振られた、親が病気だというのは個人にとっては大きなことだが、それで芝居ができなくなるのなら、役者を辞めるべきなのだ。その苦しみと痛みに耐えて芝居をするのがプロの俳優の仕事なのだから。自分が潰れるのは自由だが、一般の人の人生まで巻き添えにしてはいけない。

その意味で僕は俳優には厳しい。でも、それは同時に監督である僕にも言えることだ。親が危篤でも、恋人と別れようが、いや、自身の体がボロボロで過労死寸前でも、詰まらない映画を撮ったときの理由にはならない。何があろうが、最高の作品を作り上げるのが監督の仕事なのだ。


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